庭の思い出
小さい頃、庭は冒険の場所だった。
そんなことを思い出させてくれた、キラキラした瞳。
電車の中、窓から見える風景に夢中の瞳。
次から次へと流れていくそれに合わせて動く。
そんな時期も、あったなぁ。くらいの感覚だけど。
小さい頃住んでいた家の庭は、
想像力を養ってくれたとても大切な場所だった。
テニスコートはもうすでに使われなくなってから
10数年の時が経っていて、土のコートだったせいか、
自然と庭と化していた。
テニスのネットをはるためのポールも大分錆び付いていた。
そのポールに高鬼の時に登ろうとして、
「それは無理だと思うよ」と友達に突っ込まれた。
バランスは良かったのだが、試したくなる性分だったので、
納屋の屋根や別棟の屋根などいろんなところに登りたがった。
そのテニスコートと駐車場側の庭をぐるりと取り囲むように
敷地の周りには桜の木は30本近く植わっていて、それらの木々にこれは登りやすい。これは登りにくい。とか、勝手にランク付けをしていた。
特に木登りができるように植えられた時から曲げて育てられた木を、
時には海賊船、時にはお城と想像のままに色々なものに見立てて遊んでいた。
何度か降りられないほど高くまで登ってしまったが、大人に助けてもらうのも
格好悪く思えて、頑張って飛び降りたら足がじーんとしたのを覚えている。
門の前にある坂は、自転車で降りるととても勢いがついて楽しかった。
私が補助輪抜きで乗れるようになったのが早かったのは、
あの坂(とお向かいに住んでいた、壁にぶつかっても怒らないでいてくれたおば様)のおかげだと思う。
敷地の外回りにはツツジやさつきが色とりどり、植えられていた。外壁の隙間から子供がどうにか抜けられるようなところが1ヶ所あって、そこを通り抜けて庭で遊んでくる、と言っては抜け出したりもして遊んでいた。
あまり遠くまで行くような勇気はなくて、外回りでそっとお花を摘んだりして遊ぶくらいだった。
花は色が違うと味も違う気がして、花の蜜を吸ってはたまに切り損ねてうまく吸えないこともあった。
春は山椒の木に毎年、アゲハチョウが卵を産んでいて。
カマキリはいつ頃だっただろう?
そういう色んなことを庭から学んだ。
駐車場とテニスコートの間の道路には、毎年春と秋に蟻の行列が横切る時があった。
間に石を置いたり、砂糖を置いてみたり。お花を置いたり、色々と試してみたりしたけれど、
ちゃんと行列は迷子になることなく、続いていたように
記憶している。(道がずれたりはあった気がするけれど)
あぁいうことをずっと続けられる人が研究者には向くのだろうけれど
私はすぐに飽きてしまい、ほかの事に興味が移るほうだった。
駐車場側の庭の奥には
砂場と滑り台、そして鉄棒が高さ違いでみっつほど。
その脇に今はもうあまり見ない気がする、普通のブランコが
ふたつ。
鎖は握ると少し金属の臭いがするような、古いものだった。
座面の木も古かったように思う。
その目の前には紫陽花の気が5本ほど植わっていて。
紫陽花の横には白粉花の気が、同じく5本ほど。
白粉花の花で作るパラシュートは誰に教わったんだろう。
いつの間にか知っていた気がする。
小学校のお友達はみんなおうちが遠いうえに、
うちはさらに遠い方だったからお友達が来ることよりも
お友達のお家にみんなで行く方が多かった。
地元のお友達と学校のお友達が別々だったのも、
今思えばちょっと変わっていたのかもしれない。
胡桃の実を拾って、なんかぞわぞわする。ってなったり、
栗の実を拾って、焼却炉に投げ込んだり。
ドングリも数種類。長細いのと丸いのと種類は5種類くらい
あった気がする。
今思えば、勝手に乗り越えていただけなのだけれども
裏の庭がお隣の敷地に抜けられるようになっていて
一度おじさんにとても怒られたけど、
勝手にタイムカプセルを埋めたりしていた。
(何入れたか忘れたけど)
ドクダミの花はなんか臭い!って
あんまり好きじゃなかったけど、
ご近所のおばあちゃまにお茶にもドクダミ茶っていうのがあって身体にはいいのよ。って言われたこともあった。
月に2回ほど大人たちに混じって草抜きをしたのも楽しかった。
雑草もたくさん覚えた。
オオイヌノフグリ、スミレ、ナズナはペンペン草の名前で、
タンポポ、ハルジオンは貧乏草とも言ったっけ。
スズメノカタビラ、カタバミ、オオバコでひっぱりあいっこしたり。
ムラサキカタバミはかわいいので、すごく好きだった。
カラスノエンドウ、ヘビイチゴ、ツユクサ、ねこじゃらし。
ニワゼキショウも特別だった。
シロツメクサの花冠もよく作った。間にアカツメクサもいれて。
オナモミはよくくっいたし、ヒルガオもよく咲いていた。
ユリもほんの少しだけ咲いていて、あれはもしかすると育てていたのかもしれない。
ヒガンバナはどこか怖くて、でも数輪だけだと綺麗に思えた。
こうして考えると、庭にはたくさんの植物や木が植わっていて。
思い出せないだけで、もっともっとあったのだろう。
自然に育ててもらったことを少しだけ思い出せた気がする。
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