ポンポンと音を立てる雨

雨音がベランダから聞こえてくる。
明日は朝から雨が原因で、電車が運休になるところもあるという。
煙ったように街に薄いベールをかけるような雨は激しさを増して、風が後押しするようにざあっと音を立てて吹き抜けていく。


こんな日は宝物の「雨」を聴く。


そうっと、囁くように歌われる歌詞に、
彼に愛される人はこの声を独り占め出来るのかと思うと、
見知らぬその人を少しだけ羨ましく感じた。
こんな声に愛を囁かれる世界は、美しいだろう。

彼の声は、夜の街の灯りをぼんやりとぼかすような雨と似た、柔らかさを持ってどんな人にも等しく降り注ぐ。
世界を優しく、潤してくれる。

どんな上手い歌手でも、
声が好きという点で彼よりも好きな人を探すのは難しい。
今のところは同じくらい好きと
彼よりも好きが一人ずつくらい。
それも想い出と混じる要素があってのこと。

ヘッドホンで聴く、彼の声だけの世界も、
雨音と交じる彼の声も、
街の喧騒を背景にする声も、
たくさんの表情を持って、艶めく。
そして、彼と彼よりも好きな声を持つ人の、
新しい世界。

まだ馴染まない、その色にどんなシーンが似合うのだろう。
そんな思いで聴く。

他の何よりも好きだったあの頃の想い出と今と未来を。

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